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1940年出版の石原莞爾『最終戦争論』を読んだら、かなり示唆的なことが書いてあって驚いた。

      2015/09/21

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石原莞爾『最終戦争論』を読んだ。

戦争進化の表
↑石原作・戦争進化の一覧表(p.66)

石原莞爾といえば、満州事変をしかけた張本人で、陸軍の中でも異端とされた人物。
本を読めばわかるけど、この人、かなり賢い。
めちゃくちゃ、軍事について長けてる。

第一章では戦争の発達についてを時代とともにまとめてあり、第二章ではこれからの戦争についての予言めいたものが書かれています。
石原さんいわく、次の戦争は戦争発達の極限に達するらしい。
特徴としては
・決戦戦争(短期決戦)
・全国民が動員される
・戦闘の指揮単位は個人
・空中戦がメインとなる
・世界中を無着陸でまわれる飛行機がでてくる
・今後30年以内に起きる(**この本の出版は1940年)
・決定的な兵器が登場する

ちなみに、次の戦争で世界から戦争がなくなり、世界がひとつに統一されて平和が訪れるそうです。
太平洋戦争から70年たったけど、いまだに世界は統一されておらず、むしろ冷戦後はバランスが崩れて各地で紛争が勃発してるよ、石原さん。

■「兵器の発達が世の中を泰平にしているのです」(p.35)
この意見には賛成。
暴力を防ぐためのある程度の武力を保持することが、結果的に平和につがなると私も思う。
次の戦争で、もう人類は戦争なんてやってられないくらいの兵器が登場するから、その後、絶対平和が訪れる、という理論らしいです。

■「破壊兵器は最も新鋭なもの、例えば今日戦争になって次の朝、夜が明けて見ると敵国の首府や主要都市は徹底的に破壊されている。(中略)それぐらいの破壊力のもの」(p.37)
最終戦争で登場する兵器について言及している箇所。次の戦争では「一発あたると何万人もがペチャンコにやられる」ような徹底的な兵器が登場する、と言ってて、まさに核兵器の登場を予見してるかのような内容で驚いた。
この人ぐらい戦争や軍事について過去の歴史を調べまくってたら、次の予測もピントをはずさないものになるのかな。
この5年後に広島や長崎の原爆の話を聞いて、彼は何を思ったんだろう。「自分の予測通りだな」とか、「絶対平和は近い」とか思ったのかな。

■八紘一宇(はっこういちう)
この本で最頻出用語といっても過言ではない。
もとは『日本書紀』の一節がルーツで、それを日蓮宗の田中智学が端的に意味をまとめて作った熟語。
八紘=世界、一宇=ひとつの屋根の下、そこから「世界をひとつの家のようにする」「世界をひとつにまとめる」みたいな意味となったそうです。満州の「五族協和」のグローバル版ですね。
この「八紘一宇」は大日本帝国のスローガンにもなり、「大東亜戦争」などとともに軍国主義を想起させるため、敗戦後、公文書から排除されるくらい重要なキーワードだったらしい。

■アメリカとの戦争に勝てると思っていた?
本書には、30年以内に太平洋をはさんでアメリカと日本の「決勝」がおこなわれると書かれています。
東洋の「王道」と西洋の「覇道」のどちらが世界統一の指導原理かが、そこで決まる。
アメリカとの決勝戦を勝つためにも、準決勝で近隣アジア諸国に日本の精神を理解してもらい、東亜をまとめあげることが急務だと。
そして、苦戦をしいられるが、最後には日本がアメリカに勝ち、天皇が世界を統一すると思っていたようです。
「われらが最終戦争に勝つための客観的条件は固より楽観すべきではないが、われらの全能力を総合運用すれば、断じて可能である。」(p.110)

んー。
何を根拠にアメリカに勝てると思ったんだろう…。
相手との戦力の差を把握していた日本の海軍は、最後まで日米開戦に反対だったらしい。
陸軍でも石原莞爾ぐらいの人だったら、そのあたりの戦力分析ぐらいできそうなのにな。

 

今の時代を彼が生きてたら、どう思うんだろう。
ドローンで攻撃できるようになった今、動員されるのは全国民ではなく、機械になりつつある。
機械同士で戦いあう時代がもうすぐ来るのかな。
ターミネーターの時代が、現実になりつつある。

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