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鉱山・秘湯愛好家。東京の東側でairbnbホストやってます。

アクセスの悪い温泉宿の生存戦略を考える

      2018/08/29

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昨日まで山形の銀山温泉と肘折温泉という、タイプの違う2つの温泉地に行ってました。
銀山温泉はおしんの舞台、かつ雪の夜の夜景が写真映えするというので、アクセスがあまり良くないにもかかわらず、外国人にも人気の観光地。
かたや、肘折温泉はというと、まずは地図を。

ここは日本でも有数の豪雪地帯で、今年の冬は4.5mも雪が積もったとか。そんな場所なので雪割という変わったキャンペーンをはったりしてるエリアです。
アクセスは、新庄駅からバスで1時間。近郊の都市部・仙台からだと鉄道2~3時間+バス1時間なので、東京の人でいう伊香保温泉ぐらいの距離間かな。

温泉宿って、もともとは長期滞在して湯治をする場所であり、かつ、団体客メインだったところも多いんだけど、今そういったお客さんはめっきり減っています。その変化に対応を迫られている温泉宿(特に都市部から離れたアクセスの悪い温泉宿)がどういった戦略をとっているか、考える機会があったので自分の備忘録として書いておきます。

 

温泉宿の生き残り戦略①値上げする。

湯治部の安い値段は長期滞在が前提にあってこその値段。そこを1泊でこられると、正直採算は全然合わないと思う。
銀山温泉は、足並みそろえて一斉に価格改定にふみきったそうです。それで昔からの常連客は離れただろうけど、ネット集客で新規客を取り込んで宿として存続できるだけの収益性は担保できたんじゃないかな。
というか、肘折温泉が極端に安いんだよね。私、わりと各地の温泉宿に泊まってるんだけど、こんなに全体的に価格が安いのって肘折温泉だけじゃないかな。
1泊2食付きで6,000円とか、泊まってるこっちが心配になるレベル。たぶん今のままのクオリティで、もう2,000円くらい値上げしても誰も怒らないと思う。

 

温泉宿の生き残り戦略②インバウンド対応する。

最近少しずつ変わってきてはいますが、まだまだ長期の休みをとるのが難しい日本人。
対して、外国人客、特に欧米の会社勤めの人は平気で3~4週間の休みをとって日本に来ます。そういう人たちは、だいたい1か所に2~3泊してゆったりと休日を過ごし、かつ日本人とは違って曜日関係なく宿泊しにくるので、宿側にとっては祝前日以外の稼働率も高まってとてもありがたいわけ。しかも、お隣中国の経済発展もあり、今後も訪日外国人客数は増加するでしょう。日本に来る観光客はリピーターも多く、リピーターは大都市圏からどんどん奥地を目指す傾向にあるので、アクセス悪い温泉地こそインバウンド対応に取り組むべきかも?
長野県の野沢温泉は、雪質がとても良いので冬になるとオーストラリアを中心にスキー・スノボ客が押し寄せ、町はほぼほぼ外人で埋め尽くされるそうです。雪降る前に1回行ったことあるけど、まぁアクセスは悪い。でもそれを上回る訪問価値があれば、どんなに遠くても人は来る。日本人にとってはあまり魅力的にうつらないものでも、外人に妙にヒットするものってあるからね。野沢温泉の近くにある、温泉に入る猿が見られる地獄谷野猿公苑とかまさにそれ。

インバウンド対応で注意が必要なのが、文化の違いから起きる衝突(部屋や共有スペースの使い方が汚いとか、声がうるさいなど)をうまく対処していくこと。でも僻地に行く人ほど、自分である程度予習していくので、そこはそんなに心配ないと思われる。
あと、外国人客が多すぎると日本人客がドン引きするので、そのあたりは考慮すべきかと。中国・韓国の客を大量に受け入れた湯布院は、街中に中国語と韓国語の看板があふれ、日本の温泉街的な風情がまったくなくてほんとにガッカリした。

 

温泉宿の生き残り戦略③交通の便を良くする。

例えば草津のとある宿は、東京から宿の正面まで1日1便直行バスが出てます。
鉄道で行ってもほぼ同じ所要時間ですが、鉄道だと長野原草津口でバスに乗り換えなきゃいけないし、待ち時間や電車・バスで座れないリスクもある。このバスだと鉄道よりも安く、乗り換えなく行けるので、首都圏からアクセスしやすくなるね。

 

温泉宿の生き残り戦略④宿泊以外で収益をたてる、その1。温泉関連商品をネット販売する。

温泉に関連した商品を作り、ネット経由でどこでも販売できるようにする。
僻地に人を呼ぶことに知恵を絞るよりも、宿泊ビジネス以外の商品を開発し、ネット販売して収益の柱を作る戦法です。
島根県の玉造温泉は美肌の湯で有名ですが、その温泉を利用した「姫ラボ」という温泉コスメを開発してネットでも販売しています。
私はたまたま知人からお土産でこの姫ラボの商品をもらい、試しに使ってみたら冬の乾燥肌が劇的に改善されたので、みずからリピートしてしまいました。
やっぱりね、東京からだと島根ってかなり遠いんですよ。そういう場所に頑張って人を呼ぶよりも、商品を作って島根に来れない人にも売るっていう戦略。
ちなみに姫ラボはふるさと納税の商品にもなってるので、商品化した後は、はやりの寄付税制とからめるのもお忘れなく。

 

温泉宿の生き残り戦略⑤宿泊以外で収益をたてる、その2。大都市圏に出稼ぎに行く。

ネット販売できない商材(資格ビジネス、イベント)の場合はこちら。
例えば、新潟県の赤倉温泉の方が主催している民間資格「温泉ソムリエ」。ソムリエになるためには赤倉温泉での1泊2日のセミナーに参加しなければなりません。でも、忙しい都市圏の人のために、東京で開催されるセミナーもあり、それだと3時間半で取得できてしまうという…。
私も旅行会社にいたときに東京セミナーに参加して取得したのですが、会場にはざっと100名近くの参加者がいました。参加費用は1人22,000円だから、3時間ちょっとで200万近くを荒稼ぎしている光景を目の当たりにし、衝撃を受ける。
日本人って資格好きだし、資格ビジネスは軌道にのれば結構ぼろいビジネスだと思ってます。
あと、万葉倶楽部グループは横浜のみなとみらいにあるスーパー銭湯に湯河原・熱海から温泉をタンクローリーで輸送してるんだけど、これも出稼ぎに近いかもね。熱海・湯河原と横浜だと、人口の桁が違うから輸送コストを考えても利益でるっていう算段なんでしょう。
ちなみに、ハウステンボスも、長崎だけじゃマーケットが小さいので、大阪までプロジェクションマッピングしに行ってました。これも出稼ぎパターン。

 

今後、肘折温泉の各旅館がどの路線を取ってどう変わっていくのかしら…気になるところです。
個人的には、今のような昔ながらの湯治場の雰囲気を残しつつも、存続できるだけの売上をあげてほしいんですよね。④でいくなら、モノにもよりますが、私は先陣を切って商品買いますよ。肘折温泉は東京から離れてるので、購入することで応援したいです。

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